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執筆者の写真田中亜弥

代謝と筋肉

更新日:2020年5月15日

1.代謝とは

 人を含めた生物は、外界から物質とエネルギーを取り込み、必要な物質の合成と不要になった物質の分解を繰り返し、常に体の中身を更新して命を維持しています。体内での物質の合成反応を同化、分解反応を異化といいます。そして、これらの化学反応をまとめて「代謝(メタボリズム)」といいます。

同化(アナボリズム):摂取する栄養素(摂取カロリー)を材料として、細胞の補てんや修復、およびエネルギーの貯蔵などの働きのこと。

異化(カタボリズム):排便や汗および二酸化炭素などおる廃物の放出や、体内で使われたエネルギーによってできた体熱を放散(消費カロリー)させる働きのこと。


2.筋肉における異化と同化 

 筋肉において「同化異化」となれば、筋肉が増える=筋肥大すること(アナボリックな状態)になります。逆に、「異化同化」となれば、筋肉は落ちてしまいます(カタボリックな状態)

<カタボリックな状態になるメカニズム>

エネルギー源(主に糖質や脂質)の不足

       ↓

体内のアミノ酸が使われ始める

       ↓

体内のアミノ酸濃度の低下

       ↓

筋肉を分解することで体内のアミノ酸濃度を高めようする=カタボリックな状態


3.運動による筋肉の分解と合成

 上記で述べたように、筋肥大させるには、筋肉の分解量より合成量が上回る必要があります。そのために、筋力トレーニングを行いますが、筋力トレーニングは、筋肉の合成と分解に対し、どのような影響を及ぼすのでしょうか?

 筋力トレーニングは、筋たんぱく質(筋肉を構成するたんぱく質の総称)の分解(異化)を活性化し、トレーニング開始前に比べて、トレーニング終了後約24時間まで、筋たんぱく質が分解される状態が続きます。運動中の主なエネルギー源は、糖質と脂質ですが、一部たんぱく質も利用されます。運動により筋たんぱく質が分解されるのは、それによりアミノ酸をエネルギー源として利用するためです。

 一方、筋力トレーニングは、筋たんぱく質の合成(同化)も同時に活性化し、その活性化状態は少なくともトレーニング終了48時間まで続くと言われています。このように、筋力トレーニングには、筋タンパク質合成の活性化が分解に比べてより長時間にわたって持続します。しかし、食事を摂取しないままでは、筋たんぱく質分解の量のほうが大きくなり、筋肥大は起きません。そのため、筋力トレーニングだけでは筋肥大が生じることはなく、トレーニングにおいて適切な栄養補給が必要となります。筋力トレーニング後に栄養補給を行うと、ただ単に食事でたんぱく質を摂取した場合に比べて、筋たんぱく質の合成が著しく、相乗効果があると言われています。つまり、筋力トレーニングには、それ自体に筋たんぱく質合成を促進する効果があるだけでなく、たんぱく質やアミノ酸摂取に対する感受性を高める効果があります。そして、筋力トレーニングと栄養摂取の効果が組み合わさって、筋たんぱく質合成が顕著に活性化され、筋肥大が生じます。やはり筋肉をつけるには、筋力トレーニングと食事どちらも大切なので、たんぱく質多めのバランス良い食事と適度な筋力トレーニングをオススメします!


次回は、「脂肪酸とは①〜飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸〜」についてです。お楽しみに!


<参考文献>

・『スポーツ栄養学 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる』(一般財団法人 東京大学出版会)

※なお、このブログは、タイトルに関する基本情報を出来るだけ端的に分かりやすく伝えるために、文献から多く引用している箇所もありますが、著作権を侵害する意図はありません。私自身の知識をまとめる作業の一環でもあり、至らない所もあると思いますので、より詳しく知りたい方は上記の文献をぜひご覧ください。

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