前回の「脂肪酸とは②〜必須脂肪酸〜」の中で、必須脂肪酸の過不足にコレステロールが影響を受けることを少しお話ししました。今回は、そもそも「コレステロールとは何か?」についてお話ししていきたいと思います。
1.コレステロールとは
コレステロールは、脂質の一種で、ステロイド核を持つ化合物です。血液中だけでなく、脳、内臓、筋肉など全身の組織、特に脳や神経組織、胆汁中に多く存在します。
2.コレステロールの働き
(1)細胞膜の材料になる
コレステロールは、リン脂質、糖脂質、たんぱく質とともに全身の細胞膜を作っています。
(2)胆汁酸を作る
肝臓で胆汁酸になり、胆汁の成分として小腸に分泌され、脂質の消化吸収に重要な役割をしています。
(3)ステロイドホルモンを作る
副腎皮質では、ステロイド(副腎皮質)ホルモンの材料に、精巣や卵巣では性ホルモンを作る材料になります。また、ビタミンDを作る働きもし、細胞の働きの調節や栄養素の吸収などに関わっています。ただし、コレステロールはエネルギー源として使用されることはありません。
3.善玉コレステロールと悪玉コレステロール
コレステロールは水に溶けない性質のため、タンパク質に包まれて、リポたんぱく質として血液に溶け、全身に運ばれ、細胞に届けられます。しかし、一部余ったコレステロールは、再度たんぱく質に包まれて肝臓に戻ってきます。この血液中の余分なコレステロールを肝臓に運ぶ役割をしているのが、「善玉(HDL)コレステロール」です。血液中のコレステロールが増えるのを防いでくれています。
一方、血流に乗って、細胞に必要なコレステロールを運んでいるのが「悪玉(LDL)コレステロール」です。どちらも健康を維持するためには大切ですが、細胞に必要以上にコレステロールが増えてしまうと、血管を硬化させ、動脈硬化を促進します。動脈硬化は、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、大動脈瘤などのリスクを高まるため、「善玉」に対し、LDLは「悪玉」と呼ばれています。
4.コレステロールの増減による弊害
食事から摂取されるコレステロールは20~30%なのに対して、体内で合成されるコレステロールは70~80%です。食事で多く摂取すると、体内の量を一定にする作用が働き、肝臓での合成量が抑えられます。しかし、食事から過剰に摂取したり、ホルモンのバランスの変化や、細胞において悪玉コレステロール(LDL)を取り込む入り口(受容体)が減る等の要因で、血液中の悪玉コレステロールが増えると、前述したように、動脈硬化を起こします。
また、喫煙や運動不足、肥満、糖尿病(およびその予備群)によって、善玉コレステロール(HDL)が減ります。逆に、栄養不足や、消耗が激しい状態でも低下します。このように悪玉コレステロールが基準より高い、または善玉コレステロールが基準より低い状態になると、「脂質異常症(高脂血症)」になる恐れがあります。
5.コレステロール増減による病気を防ぐためには
厚生労働省による「食事摂取基準」では、コレステロール摂取の上限値がなくなりました。これは摂取したコレステロールが血液中のコレステロール値に与える影響には、個人差が大きく、数値化できないためです。しかし、上限なく摂取していいわけではありません。なので、コレステロールの増減による病気を防ぐためには、食生活の改善、適切な運動、禁煙・減煙が重要となります。
<食生活の改善>
・腹八分目をこころがけ、バランス良く食べること。
・節酒(適量な飲酒)をする。
・食物繊維が豊富な食品を食べる。
・コレステロールや飽和脂肪酸を多く含んだ食品(特に動物性脂肪)を摂り過ぎない。
・オメガ3脂肪酸(DHAやEPA)は、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすので、意識的に摂取する。
コレステロールは高すぎても低すぎても身体に悪影響があるので、健康診断などで自分の適正値を知り、体調に合わせて良い生活習慣を心がけることをオススメします。
次回は、シリーズ最後の「脂肪酸とは④〜トランス脂肪酸〜」についてです。お楽しみに!
<参考文献>
・『改訂新版いちばん詳しくて、わかりやすい!栄養の教科書』中島洋子監修(新星出版社)
・『コレステロール摂取に関するQ&A』(日本動脈硬化学会)
・『PET検査関連の用語集 コレステロールとは』(PET検査ネット)
※なお、このブログは、タイトルに関する基本情報を出来るだけ端的に分かりやすく伝えるために、文献から多く引用している箇所もありますが、著作権を侵害する意図はありません。より詳しく知りたい方は上記の文献をぜひご覧ください。
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