1.脂肪酸とは
私たちが摂取している脂質の大部分は、中性脂肪(トリシアルグリセロール)であり、その主な構成成分である脂肪酸の違いによって、性能や機能が変わってきます。脂肪酸は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の3種類の原子からできており、鎖状に繋がった炭素の数と、結合の状態によって分類されます。炭素同士の二重結合を持たない「飽和脂肪酸」と、炭素同士が二重につながった二重結合を持つ「不飽和脂肪酸」の大きく2つに分けられます。
2.飽和脂肪酸とは
飽和脂肪酸は一般的に肉や乳製品に多く含まれる酸化しにくい油で、体にとって重要なエネルギー源です。溶ける温度が高く、常温では固体で、体内で合成できます。
飽和脂肪酸をとりすぎると、血中の中性脂肪やコレステロール濃度が上がり、脂質異常症や動脈硬化を引き起こします。そのため、飽和脂肪酸の「食事摂取基準」は、成人男女ともエネルギーの7%以下となっています。飽和脂肪酸は、炭素数が4〜6個のものを短鎖脂肪酸、8〜10個のものを中鎖脂肪酸、12個以上のものを長鎖脂肪酸と呼び、私たちが日常でよく使う食用油脂は、ほぼ長鎖脂肪酸で構成されています。
<飽和脂肪酸の分類>
・短鎖脂肪酸:食品からも摂取できるが、主に腸内発酵で体内で生成される脂肪酸で、脂肪の合成やミネラルの吸収などに使われる。(酢、バターなど)
・中鎖脂肪酸:長鎖脂肪酸に比べ、消化吸収が早く、すぐにエネルギーとして使われ、体に蓄積されにくい。(MCTオイル、ココナッツオイルなど)
・長鎖脂肪酸:ゆっくりと吸収されて、肝臓や筋肉などの組織に運ばれたのち、余分なものは体脂肪として蓄積される。(ラード、牛脂など)
3.不飽和脂肪酸とは
不飽和脂肪酸のうち、二重結合を1つ持つ物質を一価不飽和脂肪酸、2つ以上持つ物質を多価不飽和脂肪酸といいます。低い温度でも溶け、10~20℃程度の室温では液体。
不飽和脂肪酸はエネルギー源でもあり、体の各種細胞膜の重要な構成成分です。大きく一価不飽和脂肪酸(オメガ9系)、多価不飽和脂肪酸(オメガ6系、オメガ3系)と分けることができ、その種類によって様々な働きがあります。一般的に飽和脂肪酸に比べ酸化しやすく、特に多価不飽和脂肪酸は加熱調理には向いていません。
(1)一価不飽和脂肪酸
よく知られている一価飽和脂肪酸として、オリーブオイルの主成分であるオレイン酸()が挙げられます。オレイン酸は、オメガ9脂肪酸の一つで、コレステロールを下げる作用があり、これを常食とする地中海沿岸の国々では、虚血性心疾患による死亡率が低いといわれています。
(2)多価飽和脂肪酸
オメガ3系脂肪酸、オメガ6系脂肪酸に分類され、体内で合成できない必須脂肪酸を含みます。一般的に飽和脂肪酸に比べて酸化しやすく、特に多価不飽和脂肪酸は、加熱調理には向いていません。
・オメガ3系脂肪酸:血中の中性脂肪を減らすほか、血栓ができるのを防いだり、不整脈の発生を防止したりと生活習慣病予防の効果があります。不足すると皮膚炎、集中力低下などが起こります。(α-リノレン酸、DHAなど)
・オメガ6系脂肪酸:コレステロール値を下げ、動脈硬化を予防する作用があります。しかし、LDL(悪玉)コレステロールだけでなく、HDL(善玉)コレステロールも減少させてしまうため摂りすぎには注意が必要です。(リノール酸など)
<引用>オメガ3のはたらき(マルタのえごま)
次回は、人が体内で合成できない必須脂肪酸について、詳しくお話ししていきたいと思います。お楽しみに!
<参考文献>
・『改訂新版いちばん詳しくて、わかりやすい!栄養の教科書』中島洋子監修(新星出版社)
・『スポーツ栄養学 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる』(一般財団法人 東京大学出版会)
・『脂肪酸とは?(良い脂質、悪い脂質について)』(株式会社食環境衛生研究所)
・『カラダにいい油って?正しい油の選び方』(eo健康)
・『オメガ3のはたらき』(マルタのえごま)
※なお、このブログは、タイトルに関する基本情報を出来るだけ端的に分かりやすく伝えるために、文献から多く引用している箇所もありますが、著作権を侵害する意図はありません。私自身の知識をまとめる作業の一環でもあり、至らない所もあると思いますので、より詳しく知りたい方は上記の文献をぜひご覧ください。
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